「あんた、やけにおとなしいのな?」

「そうですか? あなた方こそ、意外と親切と言うか……」

「へ? 兄貴、聞きましたか? 俺達が親切ですってよ?」

「まったくこのお嬢様には調子が狂うぜ。あんたが騒がねえから俺達はおとなしくしてるわけよ。俺達はワルだけどよ、意味もなく乱暴するわけじゃねえんだよ。分かるかい?」

「あ、はい。分かった気がします」

「逆に言えば、意味があれば平気で乱暴するぜ? 例えばだ、あんたを車で迎えに来てた運転手がいたろ?」

「はい」小林さんの事だわ……

「あいつに運転されて後を追われちゃまずいから、痛め付けてやったよ」

「痛め付けるって、まさか……」

「なあ?」

「へい。腹を思い切り蹴っ飛ばしてやりましたよ。死んじゃいねえと思いますが、病院送りじゃないすかね」

「という事なんだな、お嬢様?」


そう言ってサブという人は、ニヤッと意地悪そうに笑った。

前言撤回。この人達は親切なんかじゃないし、悪い人達だわ。小林さん、可哀想……


「それと、俺達はあんたにも乱暴するぜ? そのために連れて来たんだからな」

「兄貴、そろそろやりますか?」

「そうだな。いくらかあったまって来たしな。やっていいぞ」


小林さんに酷い事をした男が、私に向かって手を伸ばして来た。