令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

「金なんか……。どうせ向こうは大金持ちなんだし」

「それは違うわ。人は他人においそれとお金を出してくれないものよ。あの時だって、銀行はおろか、サラ金も親戚も、どこも助けてくれなかった。助けてくれたのは、唯一会長さんだけだった」


確かにそうだ。悪態をついてはみたものの、世間が人に冷たいという事は、俺も身に染みて知っている。


「会長は、負い目を持ってるって事かな……」

「そうだと思う。でも、会長さんは決して謝罪の言葉は口にしなかった。経営者としてのご自分の判断に誇りを持ってらっしゃると私は思ったわ。でも、同時に人一人の命を救えなかった、という負い目を感じてらっしゃるんだと思う」

「なんでそれを俺に言わなかったんだろう」

「あの方は、頑固で意地っ張りだからでしょうね。私も口止めされているのよ。特に身内の方には、知られたくないらしいわ」


確かに頑固そうだもんなあ。あのじいさんは……


「あ、じゃあおふくろさんが会長に会ってるのは……」