令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

「そもそも、会長さんを恨むなんて……」


おふくろさんの言葉に驚き、俺は顔を上げておふくろさんを見た。今のは、俺の聞き間違いだろうか……


「私も初めは会長さんを恨んだわ。会長さんが融資してくれてたら、あの人は死なずに済んだのに、って……」

「そうだよ。それが事実でしょ? という事は、吉田泰造はおやじさんの仇って事で合ってるんじゃないのか?」

「悠馬、それ本気で言ってるの?」

「えっ?」

「無理にそう思い込もうとしてるんじゃないの?」

「ち、違うよ。なんで俺がそんな事を……」

「そうね……。例えばだけど、お父さんが死んだ哀しみを紛らわすためとか、お父さんへの手向けとか。あるいは生きるための目標、と言ったら言い過ぎかしら」

「そ、そんな事は……」


ない、とは言えないと俺は思った。