令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

「もう、何やってるのよ……」


俺が話し終えた時、おふくろさんが発した言葉はそれだった。そう言ったおふくろさんの顔には、呆れと共に哀れみが現れていた。


「俺、何か間違えたのかな」

「“何か”じゃないわよ……。何もかも、全部間違いだわ」

「全部?」

「栞さんが可哀想……」

「いや。栞にはまだ手を出してないから……」


キスはしてるが。


「だとしても、気持ちはどうなるの? 栞さんは、悠馬を好きになってくれてるんでしょ?」

「それはまあ、たぶん……」


そして俺も栞が好きだ。恥ずかしくて、おふくろさんには言えないが。


「栞さんが本当の事を知ったら、どんなに辛いか……」


あっ……


俺はおふくろさんに言われるまで、ちゃんとその事を考えてなかった事に気付いた。つまり、栞の気持ちを。俺は自分の事ばかり考え、栞の事を考えていなかった。


悲しい顔で涙を流す栞を思い浮かべたら、胸がギューッと締め付けられ、涙が出そうだった。