令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

「噂って何なの? それに“仇”って……」

「噂というのは、ちょっと言いにくいんだけど、おふくろさんが、その……吉田泰造の……」

「私が会長さんの、何なの?」

「愛人じゃないかって……」


本当は口に出すのも嫌な言葉だったが、俺は思い切ってそれを言うと、おふくろさんの反応を窺った。するとおふくろさんは、初めはポカンとしていたが、次には頬をほんのりと赤く染めた。

え? マジかよ……!?

と、一瞬俺は焦ったが、


「何をバカなこと言ってるのよ。そんなわけないじゃない」


と、おふくろさんはキッパリと否定し、俺はホッと胸を撫で下ろした。


それにしても、おふくろさんの初めの反応は紛らわしかった。たぶん、おふくろさんの女の部分を刺激してしまったのだと思う。おふくろさんだって女なんだから。息子の俺としては、あまり考えたくはないが。


「だったら、おふくろさんはなんで吉田泰造なんかに会うんだよ?」


俺の想像も噂もハズレなら、いったいどんな理由なのか。俺にはまったく見当もつかなかった。