栞を乗せた車が走り去るのを見届けると、俺は重い足取りで家路に就いた。


栞の父親が本気で栞を守ろうとすれば、俺はもう栞に近付く事すら出来ないのかもしれない。未練たらしく栞とカレカノを続けたいと思ったが、きっぱり諦めるほかないのだろうか……



「ただいま……」


家に帰ると、パジャマ姿のおふくろさんが、1階の部屋で湯飲みをすすりながらテレビを観ていた。


「お帰りなさい。あら、今日から遅くなるんじゃなかったの?」


おふくろさんは、壁の時計に目をやり驚いていた。今日から栞がバイトに復帰したから、本来なら確かに今日から帰りが遅くなるはずだった……って、何でおふくろさんがそんな事まで知ってるんだ?


「おふくろさん、何でそれを?」

「由紀から聞いてるわよ。色々と……」


あちゃ……、そういう事かあ。由紀は、顔を合わす度に栞との事をあれこれ聞いて来るから、つい俺も由紀に喋ってしまっていた。例えば、今日から栞がバイトに復帰する事も……


「あんのやろう……とっちめてやる!」


そう言って、俺が階段を駆け上がろうとしたら、


「由紀ならいないわよ?」


とおふくろさんから言われた。