「そっちこそ放せよ。僕とこの子は知り合いなんだから、邪魔しないでくれ」


と俊樹さんは言ったものの、


「痛……わ、わかったよ、放すよ」


と言って私の腕を放し、革ジャンの人に掴まれた腕を擦った。たぶん革ジャンの人は、俊樹さんの腕を持つ手に力を入れたのだと思う。きっと凄い握力なんだわ。


「乱暴だなあ、アンタは……。僕達は話をしてるだけなんだから、邪魔しないでくれよ。さあ、行こう、栞ちゃん?」


そう言って再び俊樹さんは私に手を伸ばしたけど、その手を革ジャンの人がガシッと掴んだ。


「何すんだよ?」

「お嬢さんに触るな」

「はあ? アンタには関係ないだろ? 消えろよ」

「おまえが消えろ」

「何だと? あ、いてててて……わかったから、放してくれ」


革ジャンの人がパッと手を放すと、「馬鹿力め……」とぼやきながら、俊樹さんはまた腕を擦った。そして、


「栞ちゃん、今度ゆっくり話そう?」


と言ったけど、


「いいえ、あなたと話し合う余地はありません」


と私はキッパリと言い放った。すると俊樹さんは悔しそうに顔を歪め、車に乗り込むと走り去って行った。