「あらあら。どうしたの? 亮はそんなに酷い事をしたの?」

「あのね。お仕事が終わって、悠馬さんと一緒にお店を出たら……って、あっ」


私は思わず口に手を当てた。だって、悠馬さんと一緒にお仕事をしている事は、ママにも話してなかったから。


「いいのよ? 栞が松本さんと同じ所で働いてる事は、薄々気付いていたから」

「ごめんなさい。隠すつもりはなかったんだけど……」

「いいの。それより話を続けて? お店を出たところで、何があったの?」

「うん。男の人が私達に近付いて来て、私に車に乗れって言ったの」

「えっ? いきなりなの? それってどういう……」

「私もびっくりしたんだけど、その人、小林さんという方なのだけど、お話を聞いてみたら、小林さんはパパの会社の方で、パパから頼まれたんだって。私を迎えに行くようにって。それも毎日」

「えーっ? それは何かの間違いじゃないの?」

「間違いじゃないと思う。小林さんははっきり“社長から頼まれた” って言ったし、この家の場所をご存知だったもん」

「そうね。ちゃんとこうして栞を送ってくれたしね? でも、なんだって亮はそんな事を……」

「私もそれを知りたいの。今すぐに」

「そうね。じゃあ行きましょう。亮が何を企んでるのか、二人でとっちめてやりましょ?」