令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

そうこうしていたら、


「こんばんは!」


女の子らしい柔らかい声がしてそちらを見れば、栞が店にやって来て、ちょうど厨房から出て来た店長に挨拶しているところだった。

もしかすると、栞はもうここへは来れないかもと心配したが、それは俺の取り越し苦労だったようだ。


約10日ぶりに見る栞は、相変わらずめちゃくちゃに可愛い。真っ白なモコモコのコートが目に眩しく、薄暗い店内が、急に明るくなったような気さえする。

ハワイへ行くと言うから、もしかして日焼けして帰って来るかと思ったが、透き通るような顔の白さは行く前と変わっていない。黒目がちな大きな目と、ピンク色した小さな唇。まるでフランス人形を見ているようだ。


栞は、店長に土産を渡した後、足早に帰ろうとする杏里さんを掴まえていた。杏里さんは栞に良い感情は持っていないらしく、栞が店に来るとさっさと帰って行くのが常だ。今夜もそうしようとしたが、そこを栞に呼び止められ、胡散臭そうな顔で栞を見ていた。


そんな杏里さんにも栞は頭を下げ、土産らしき包みを渡していた。杏里さんは渋々という感じでそれを受け取ると、中も見ないでさっさと帰って行った。

二人の性格の違いがよく分かる光景だな、と俺は思った。そして……


「お久しぶりです」


やっと栞から声を掛けられ、はにかんだような顔で見つめられると、俺はついニヤケてしまうのだった。