令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

「えっ?」


俺、杏里さんに“待ってくれ”なんて言ったっけ?

杏里さんとの会話を思い返してみたが、俺はそんな事は言ってないと思う。


「杏里さん。俺は別に、ま……」

「いいわ。あたしが手伝ってあげる」


“待ってほしいなんて言ってませんよ”と俺は言おうとしたが、それを言わせてもらえなかった。それよりも、杏里さんは妙な事を言った。

“手伝う”って、どういう事だ?


「杏里さん、それはどういう……」

「遠慮しなくていいから、あたしに任せておいて?」

「いや、しかし……」

「あたし、着替えるから」

「あ、はい……」


着替えをするスペースはその部屋しかなく、俺は杏里さんの言葉が気になりながらも、杏里さんと入れ違いにロッカールームを出た。


杏里さんが言う“手伝い”については、例えば俺と栞が二人っきりになれるようにしてくれるとか、自分に都合のいいように解釈した。


それが、とんでもなく甘い考えとも知らずに……