令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

「あ、お疲れさまです」


咄嗟に挨拶したら、杏里さんに腕を引っ張られ、ロッカールームに逆戻りさせられた。そして杏里さんはバタンとドアを乱暴に閉めると、


「もう……どうなってんのよ?」


と言った。頬っぺたを膨らませ、プンプンと怒った顔を俺の顔に近付けながら。


「はい? 何の事ですか?」


顔を逸らしながらそう聞くと、


「何惚けてんのよ! あの女への復讐に決まってるじゃない」


と怒鳴られた。そう言えば、杏里さんには話してあったんだっけな。吉田泰造への復讐と、その目的で栞に接近している事を……


「ねえ、順調なの?」

「いやあ、あんまり順調では……」


栞の“心”はたぶんもらったと思うが、体の方はまだだし、今後は吉田泰造の妨害が予想されるだけに、そんな風に俺は答えた。

それ以前に、この計画を何としても成功させよう、という当初の意欲が、このところ俺の中で薄れてきていると思う。バカにされそうで、それを杏里さんに言うつもりはないが。


「何をもたついてるのよ。いつまで待たせるつもり?」