令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

「この子、具合が悪いので帰らせます」


絵理はみんなに向かってそう言い、私の腕を取って立ち上がった。


「どうもすみません」


私も立ってみんなにお辞儀をしたら、みんなから「大丈夫?」とか、「お大事に」と声を掛けてもらえた。松本さんだけは何も言ってくれなかったけど。


「あたしも一緒に帰ろうか?」


絵理が、お店の出口で私にコートを着せてくれながらそう言った。


「ううん、大丈夫」


実際、もう大丈夫だと思った。松本さんから離れ、出口まで歩く間に、気分の悪さは殆ど治まってしまっていた。


「ほんとうに?」

「うん、ほんとだよ」

「今日はごめんね?」


絵理は眉を下げ、本当に申し訳なさそうな顔をした。