令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

俺はちょっと考えてから、


「そうですか。じゃあ、見学はまたの機会にさせて頂きます」


と答えた。我ながら、上手い答えだと思った。


「そうかね。では、今日は話をするとしようか? 昨夜は十分な話が出来なかったからな。互いに……」

「はい、そうですね」


吉田泰造は、細いが眼光の鋭い目で俺を見て言い、俺もまた、真っ直ぐにそれを見返して言った。


先ほどの秘書らしき女が茶をテーブルに置くと、


「しばらくは電話を取り次がないでくれ」


と吉田泰造はその女に告げた。すると、少しの間を置いてから、


「かしこまりました」


と女は答えた。女の顔を俺は見てなかったが、恐らくは驚いたのだろと思う。天下の吉田グループ会長が、俺みたいな若造とどんな密談をするのか、ってな。