令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

「はい、構いません。家は……」


という事で、俺は自分から家族について喋りだした。一々質問に答えるのではまだるっこしいから。


「母と妹の三人家族です。母は小さな出版社で編集の仕事をしています。妹は高校3年ですが、卒業後は就職します」


“お宅と違って金がないから”と続けたいところだが、もちろん口には出さなかった。


さてと、ここからが問題なんだよな……


「父は7年ほど前、“事故”で死にました」


俺はそう言うと、僅かに首を動かし、しっかりと吉田泰造の顔を見た。今の話で、吉田泰造は気付いただろうか。

7年前のちょうど今頃、おやじさんは川に身を投げて死んだ。吉田泰造に面会した直後に。


(その“事故”を、あんたは思い出したか? まさか忘れたなんて事は、ないよな?)