令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

「俺は構いませんよ」


いけねえ、つい“俺”と言っちまった。弘司みたいに気取って“僕”と言うつもりだったのになあ。

これじゃあ、床屋へ行き、タイを絞めた甲斐がないが、まあ言っちまったものは仕方ない。無理したって、いつかはボロが出ちまうだろうしな。


「普段は合コンなんて行きません。俺はああいうのは大嫌いなんで。あの日は悪友に騙されたんです。普通に飲み会だって言われて、着いて行ったのが間違いでした。もっとも、おかげで栞さんと出会えたわけで、その意味では結果オーライでしたけど」


スラスラと俺が喋ると、


「わ、私もです。お友達から人数が足りないから、どうしてもって頼まれて仕方なく行ったんです」


すかさず栞もそう言った。それは家族に向けてと言うよりも、俺に向けて言ったように思ったから、


「うん、それは前に聞いたよ」


と俺は小声で栞に返した。