令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

栞はすぐに「はい」と答え、俺はいよいよにっくき吉田泰造と対面すると思うと、自然と手に力がこもるのだった。


「悠馬さん、緊張してる?」


それが握り合う手から栞に伝わったらしい。もちろんその訳を栞に話せるわけもなく、

「ああ、少しね。有名な吉田泰造さんと直に会うと思うと、やっぱりね……」


と、適当な言葉でごまかすと、なぜか栞までギュッと俺の手を握り返してきた。


しばらく無言で歩き、俺達は栞の家の前に着いた。俺は何度も来て、と言うか昨夜も来たばかりで、とっくに見慣れたはずの家なのだが、今夜は別の建物に見えてしまう。

それはまるで、俺の行く手を遮る巨大な城壁のようだと思った。


「なんか、私まで緊張して来ちゃった。でも、父も母も気さくな人だから……」


栞は俺が緊張してると思ったらしくてそう言ったが、俺が緊張してるとすれば、それは栞の親ではなく祖父さんに会うためだ。

"祖父さんはどうなんだ?”と言ってみたいところだが、「そっか?」とだけ言い、栞に続いて俺は吉田家の門をくぐった。