令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

「ううん、私が早く着いちゃったから……」

「そっか。じゃあ、行くか?」

「うん」


俺が栞を送る時にいつもしているように手を差し出すと、栞もまたいつものように俺の手を握ってきた。子どものそれのように小さく華奢で、少し冷たく、それでいて柔らかな手で。

いつもの夜中と違って人通りが多く、少し恥ずかしい気がしなくもないが、構うもんか。

時間がないだけに、それが出来る時はなるべく栞に触れていようと思う。それは計画を進めるためなのだが、正直、それだけとは言い切れないのも事実だ。


「なんか今日の悠馬さん、いつもと雰囲気が違うね?」


歩き出すとすぐに栞はそう言って、俺の顔を見上げた。


「え? ああ、だよな? 今日はちょっと身なりに気を使ったからな。床屋にも行ったし」


即座にそう答えてから、俺は“しまった”と思った。栞の親のウケを狙って俺は髪を切り、らしくない服を着てきたのだが、果たして栞はどう思っているのか。

たとえ親にウケたとしても、肝心の栞に幻滅されたら、元も子もないだろうが……