俺は次の日、数ヶ月ぶりに床屋へ行き髪を短くしてもらった。なぜなら、今日は栞の家に呼ばれているからだ。と言っても、別に栞の両親に気に入られたいなんてちっとも思ってはいない。ただ、悪い印象を与えて警戒されたり、栞との仲を反対させないようにするためだ。

そしてなんと、吉田泰造も栞の家に来るらしい。俺に会いに、わざわざ。しかも俺を呼べと言い出したのは、その吉田泰造自身らしい。


その事から、吉田泰造は一人しかいない孫娘の栞が可愛くてしょうがない、という事実が窺えると思う。という事は、栞を使えば吉田泰造に大ダメージを与えられるはず、と踏んだ俺の判断はやはり正しかったのだ。


「あれ? お兄ちゃん床屋さんに行ったんだ?」


家に帰ると、俺を一目見て由紀がそう言った。