駅に早めに着き、改札の外で私は悠馬さんが来るのを待った。

そう言えば、土曜日以来俊樹さんから何も連絡はない。あの話、つまり私と俊樹さんの縁談は、このまま自然消滅してくれるといいなあ……


しばらくして、改札を出て、たぶん家路を急ぐ多勢の人の群の中に悠馬さんの姿を見つけた。周りの人より頭一つ近く背が高い彼は、とても目立っていた。

普段の悠馬さんと少し雰囲気が違って見えるけど、彼である事は間違いないと思う。その証拠に、彼は私に気付くと、ニコッと白い歯を見せ微笑んでくれた。


「待たせてごめん」

「ううん、時間ピッタリよ? 私が早く着いちゃったから……」

「そっか。じゃあ、行くか?」

「うん」


いつものように悠馬さんは手を差し出し、私は彼の大きくて温かい手をしっかりと握り、家に向かって歩き始めた。