「絵理は何にしたの?」

「あたし? あたしはね……これよ?」


絵理はパスタの一つを指差した。


「私もそれにする……」

「そう? わかったわ」

「私、ちょっとお手洗いに行ってくる」


そう絵理に告げ、私は席を離れた。


お手洗いの鏡の前に立っていたら、すぐに誰かが入って来た。絵理だ。


「栞、やっぱり楽しめない?」


絵理が心配そうな顔でそう言った。


「う、うん……」

「“あいつ”のせいでしょ?」

「“あいつ”?」

「あいつよ。松本悠馬とかいう奴」

「“奴”って……」


でも、図星だ。私はあえて肯定はしなかったけど、否定しない事で肯定になったと思う。


「だよね。あんな奴からガン見されたら、あたしでも居たたまれないわ」

「私、かなり嫌われちゃったみたい……」


言葉に出したら、急に泣きたくなってしまった。