俺はその晩の仕事が終わると、その足で杏里さんのアパートに向かった。事前に栞の事を話し、杏里さんが店で騒がないようにするためだ。

それと、俺と杏里さんの関係を栞にバラさないように頼むつもりだ。どう頼めば納得してもらえるかは分からないが、何が何でもそうしてもらわないと。


もし栞が俺と杏里さんの関係を知ったら、うぶな栞は間違いなく俺から離れて行くだろう。そうなっては、栞を使って吉田泰造に復讐する、という俺の計画は台なしだ。


「あら、来てくれたの?」


予告もなく部屋を訪れた俺を、杏里さんはすんなりと迎い入れてくれた。


「ハル君が自発的に来てくれるなんて珍しいわね? あたしに会いたくなったの?」

「いや、その……実は早急に話したい事がありまして……」

「なんだ。まあいいわ。熱いコーヒー淹れるから座って待ってて?」

「はい……」


さてと、どう話せばいいのかなあ。