「店長、なに企んでるんですか?」

「人聞きの悪い事を言うな。人が入れば俺もおまえも楽になるし、彼女目当ての常連が増えるかもしれないだろ?」

「それだけですか?」

「そうさ。早く行って、彼女に言ってやれよ」

「はあ……」


俺が今ひとつ納得出来ないまま店長に背を向けたら、


「せいぜいイチャイチャしてくれよ。杏ちゃんの前で」


と店長は呟いた。


…………ん? それかよ!?


店長のやつ、杏里さんに俺と栞を見せつけ、杏里さんに俺を諦めさせようって考えたに違いない。それで自分にチャンスが巡って来ると……


信じらんねえ。そんな事のために人を雇うか? 普通……



栞に告げたら、当然ながら彼女は大喜びだった。

クソ……。面倒な事になっちまったなあ。