「それはその……、悠馬さんがどんな場所で働いているのか、知っておきたいかな、なんて……」


栞は顔を赤らめ、目を泳がせ気味にしてそう言った。きっと照れ臭いのだろう。

そう言う俺も、嬉しいというか何ていうか、妙な気分になり顔が熱くなるのを感じた。

そんな自分の顔を栞に見られたくなくて、

「ふーん。じゃ、行くか?」

と言って、俺は前を向いて歩き始めた。



栞と電車に乗り、二駅先にある俺のバイト先へ栞を案内した。なぜかは知らないが、栞は辺りをキョロキョロ見ながら、結構楽しそうにしていた。



『準備中』のふだの下がった、俺のバイト先である小さな洋食屋の前に来た。当然ながら店内は真っ暗だ。


「ちっちゃい店だろ?」


と俺が言ったら、栞は否定せずに「あ、はい」と言った。実際に小さいんだからいいんだけども。