「栞はどこへ連れてってほしいのかな?」


そう言いながら、俺は栞の顔を覗き込んだ。すると彼女は、恥ずかしそうにモジモジした。ってことは、本当にホテルかもな!


「恥ずかしがらずに言ってごらん?」


俺は顔がにやけそうになるのを何とか堪え、栞の返事を待った。ところが、


「悠馬さんの……お仕事先です」


はあ?
何だよ、それは……


「なんで?」

「やっぱり、いいです」


思わず俺が不機嫌な声で言ったら、栞はか細い声でそう言って下を向いた。

しまった。また泣かしちまいそうだ。こいつに嫌われたらまずいからな、少しは優しく接しないとな。


「いいよ。ここから遠くないし、行ってみるか?」

「本当にいいんですか?」


思い直して俺が優しい口調で言うと、栞はすぐに顔を上げて元気な声を出した。俺はホッとしつつも、


「ああ。でも、なんでそんな所に行きたがるんだ?」


その疑問を栞にぶつけた。