令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

私と悠馬さんは、横に並んで歩き始めたのだけど……


「あの、こっちです」


悠馬さんは違う方向へ歩いてしまい、私は慌てて彼のコートの袖口を持って引いた。


「お、そうか」


それから少し歩いた先でもそうなり、同じ事を繰り返した。すると、


「面倒だから、こうするか……」


そう言って、悠馬さんは私の手を握った。びっくりして彼の顔を見上げたら、「嫌か?」と聞かれたけど、「いいえ」と私は答えた。本当にイヤではなかったから。


そして私達は手を繋いで歩き始めたのだけど、私は人目が気になり、恥ずかしくて俯き気味になってしまった。だって、今までパパやお祖父様以外の男の人と手を繋いで歩いた事なんて、一度もなかったから……


「おまえの手って、ちょっと冷たいのな?」

「あ、ごめんなさい!」


慌てて私が手を放そうとしたら、


「いいって」


悠馬さんにギュッと強く握られた。

悠馬さんの手は、大きくて力強くて……、温かかった。