パパもママも贅沢は嫌いな人で、家の大きさだって、ご近所の家と比べて少し大きいかな、という程度。

いわゆる使用人だって、時々人から『たくさん雇ってるんでしょ?』って聞かれるけど、家には婆やさんが一人いるだけ。しかもママは婆やさんに家事を任せっきりではなく、普通にお掃除をしたりご飯を作ったりしている。


という事で、ごくごく普通の家なんだけどなあ……


私は、みんなからの好奇や驚きの視線に晒されるのが恥ずかしく、俯き気味でいたのだけど、それらとは異質で、かつ一際強い視線を感じた。

それは、例えば殺気のような……と言っても、“殺気”というものがどういうものかはよく分からないのだけど。


とにかく、他の人とは違う、攻撃的な視線を感じ、私は恐る恐る顔を上げた。すると、すぐにその視線の主が分かった。


松本さんが、正面から私を鋭い目で睨んでいた。