「へえー。栞はどこへ連れてってほしいのかな?」


悠馬さんは少し屈んで顔を私に近付け、微笑みながらそう言った。微笑みと言っても、ニターって感じだけど。


「えっと……」

「うんうん」

「あの……」

「恥ずかしがらずに言ってごらん?」

「あ、はい。悠馬さんの……お仕事先です」

「………はあ?」


あれ? ダメなのかなあ。途端に悠馬さんの顔から笑顔が消え、はっきりと不快な表情に変わってしまった。


「なんで?」


また悠馬さんの機嫌が悪くなっちゃった……


「やっぱり、いいです」


私は下を向いてそう言った。また涙が出そうだったから。ところが、


「いいよ。ここから遠くないし、行ってみるか?」


と悠馬さんは言ってくれて、私は思わず顔を上げた。