令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

ああ、やっちまったなあ。

今日の目的は吉田栞と接近する事だろうが。そしていいとこを見せるんじゃなかったのか?
そのために痛い出費までしたっていうのに、何やってんだよ、俺は……

とその時、


「お兄ちゃん!」


怒鳴り声と同時に、由紀に腕を引っ張られた。


「栞さんに謝って!」

「俺が? なんで?」

「“なんで?”じゃないでしょ? 栞さんに酷い事言って、泣かせちゃって……。お兄ちゃん、サイテー!」


そう言われて吉田栞を見たら、確かに彼女は目に涙をいっぱい溜めていた。そして、


「由紀ちゃん、いいの。私が悪かったんだから……」


と、吉田栞は鼻声で言った。俺はそれを見て、怒りがスーッと収まるのを感じると共に、可哀相な事をしたと、猛烈に反省した。我ながらかなり意外なのだが。そして……


「ごめん」


そんな言葉が自然と口をついていた。