令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

「あの、悠馬さんは私の祖父をご存知なんですか?」

「え?」


しまった。声に出ちまったらしい。


「あ……知ってるよ。吉田グループの会長で、経済界の大物だからね。誰でも知ってると思うよ?」


俺は何食わぬ顔でそう答えた。俺の目的、つまり吉田泰造への復讐を、吉田栞に感づかれたらまずいからな。


そう言えば、由紀はどうなんだろう。やはり吉田泰造を恨んでいるだろうか。そう思って「由紀も知ってるよな?」と振ってみたのだが……


「え? ん……知らなかった。もうすぐ社会人なのに、勉強しないとダメだね?」


とか言って、ペロっと舌を出した。


わざと惚けてるわけではなく、由紀は本当に吉田泰造の名を知らなかったらしい。という事は、おやじさんが死んだ訳も知らないんだろうか……


あの時、由紀はまだ小学生だったし、今まで由紀とその話をした事がないから、知らなくても無理はないかもしれない。


由紀は、知らないままの方が幸せかもしれないな。どす黒い感情は、俺だけでたくさんかも……