令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

そっちに目をやったら……吉田栞が来た!

なぜか急に息苦しさみたいなものを感じていたら、隣で立ち上がった由紀に「お兄ちゃん!」と怒られた。“お兄ちゃんも立って!”って意味だろう。俺は仕方なくだが立ち上がった。


吉田栞は、由紀を見てキョトンとしていた。それはそうだろう。言ってなかったからな。

初めはなぜか悲しそうな顔の吉田栞だったが、由紀と互いに「はじめまして」と挨拶を交わす時には、いつもの人懐こそうな笑顔になっていた。

どうやらヘソは曲げてないようだな。よしよし。


吉田栞が座ると、俺も座りながら「なんか、ごめん」と謝った。吉田栞は何の事か分からないらしく、大きな目で俺を凝視した。この事態の言い訳をしようと思ったら……


「お兄ちゃんったらドジだから、ダブルブッキングしたんです」


と由紀が説明してくれた。“ダブルブッキング”か。由紀はうまい事を言うなあ。“ドジ”は余計だが。