「生意気な妹でびっくりしたろ?」

「え? ううん、そんな事ありません。明るくて可愛くて、健気で……。私は由紀ちゃんの事、大好きです」

「そ、そうか? そう言ってもらうと、ちょっと嬉しいかな。ハハ」


あ、悠馬さんが笑った。すっかり機嫌は直ったみたい。


「さてと、これからどうすっかなあ」


悠馬さんはそう言って頭をポリポリと掻いた。特に予定はないらしい。

実は、私はこのタイミングを待っていた。と言うのは、私には行ってみたい場所があった。悠馬さんに連れて行ってほしい場所、と言った方が正確かな。

よし、言ってみよう。


「悠馬さん?」


そう声を掛けたら、なぜか悠馬さんは驚いた顔をした。


「あんた、今“悠馬”って……」


ああ、その事か。


「由紀ちゃんも“松本さん”だから、これからは悠馬さんって呼ばせていただこうかと……」

「ああ、なるほどね。だったら俺も、あんたを“栞”って呼ぶか?」

「は、はい! お願いします」


わあ、嬉しい……


「で、栞。何か?」

「あ、はい。実は行ってみたい場所があるんです。よろしかったら、悠馬さんに連れて行ってほしいかな、なんて……」