令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

「栞、どうしたの? 帰るわよ?」


絵理は、動こうとしない私に向かい、怪訝そうな顔をした。


「私、帰りたくない」

「え?」


絵理は私の言葉に目を丸くした。考えてみたら、私が絵理に逆らうのは珍しいかもしれない。もしかすると、初めてかも。


「栞……?」

「だって、せっかく……」


“松本さんにまたお会い出来たのだから”と言いたいけど、それは恥ずかしすぎる。


「来たんだから、お茶を飲みたい」

「でもあんた、大丈夫なの?」


“大丈夫”って、何の事だろう?
それは解らなかったけど、とりあえず、


「うん、大丈夫だよ?」


と言うと、


「そう? じゃあ、そうしよっか?」


と言って絵理は私の腕を放した。

はあ、良かった……