「あなたが栞に近付く事です」


絵理はキッパリとした口調でそう言った。
ああ、そういう事か……。絵理は松本さんの事、嫌いだもんね。
でも、私は……


松本さんは憮然とした顔で無言だった。


「とにかく座ろうよ? 店員さんが困ってるからさ」


榊原さんがそう言うまで気付かなかったけど、可愛い制服を着たウェイトレスさんが、お水の乗ったトレーを手に側に立っていた。


「あたし達、帰りますから」


えっ?

絵理は榊原さんに向かってそう言い放った。


「絵理ちゃん、そう言わずに、ちょっとだけ……」


絵理は榊原さんの言葉を無視し、クルッと私の方を向くと、


「栞、帰りましょう?」


と言って私の腕を持った。

絵理の剣幕に気圧されそうになりながらも、私は動かなかった。だって、せっかく松本さんと再会出来たのに、お話しもしないで帰るなんて……絶対イヤ!