……後から気づいたことだが、もしかすると和眞くんは、彼女の不安も、俺にどう伝えればどう行動するかも、はじめからお見通しだったのかもしれない。
本音を伝えてみたら、と言われたら、俺は拒否して、最後まで我慢できたかもしれない。
我慢を強いられたから、かえって堪えきれなくなったのだとしたら―――
まったく参っちゃうよな……、と入栄は苦笑する。
「どうかした?」
―――ま、いっか。
誰かのことを考えて―――しかもそれがよりによって男のことで萎えるとか、野暮なことはやめよう。
愛しい人が、今、俺の隣にいてくれるこの瞬間が、すべてだ。
「あいかわらず俺の彼女は可愛いなぁとおもってね」
ウィンクを飛ばすと、彼女はわかりやすく顔を赤くして、
「も、もうっ!」
全身で幸せを噛みしめる。
「はは。さ、行こ」
手のひらを差し出す。
このあいだまでは、自分から握らなければ決して触れ合えることがなかった。
今。
自然に重なる手―――。
歩き出す2人の頭上はあたたかな光と、そして、
夢のような桃色で覆われている。
END

