やさしい色


「やっと、ほんとうのきもち話してくれた」

「え……?」


 ―――……え。

 刹那、唇に、ひどくやわらかくてあたたかな感触があった。


 呼吸も思考も時間さえも……、


 俺を取り巻く世界のことごとくが、その瞬間、停止した。



「ずっと、苦しめてばかりで、ごめんなさい」


 棒立ちになる自身を叱咤して、現実の把握をいそぐ。


 ……これは、なんだ……そういうことだって思って、いいんだよな……?


 無防備に身体を預ける彼女に暫しのあいだ放心し、ほとんど気の抜けた状態のまま入栄はおたおたと腕を回した。


 馴染んだ感触がたちまちのうちに全身に血を巡らせて、入栄の瞳に光が宿った。


 正気づいたように入栄はぎゅっと腕に力を込め、惜しみながらも思い切って彼女の身体を離す。


「吉崎さん……」

「はい」

「吉崎さんは、その……つまり」


 肝心なところで言葉が出ず、入栄は誤魔化すように鼻を啜る。


「だからその……俺のことが―――」

「好き」


 遮るように言って、さらに彼女は俺が最も欲しかった言葉をよどみなく言い添えた。


「―――もう、迷わない。わたし、入栄くんが好き」


 胸がうちふるえた。

 彼女は俺の手を取ってやさしく包み込み、真摯な眼差しを投げかける。




「わたしが隣にいても、いい……? まだ、間に合う?」