「お前等、動くんじゃねぇ。」
突然、上から聞こえてきた地の底から唸るような低い低い声。
「哲平か…………。」
あたしはゆっくりと哲平を見た。
上から下っ端を見下ろしている哲平の瞳はどこか揺らいでいる。
哲平はあたしを見つめるとそのまま手すりに手をかけて降りてきた。
「危ないことすると大事な下っ端達が心配で泣くぞ。」
「心配はさせねぇ。それに俺はこいつ等を守るんだ。そんな脆い身体じゃねぇ。」
「そうか、後ろに移動したのも気が付けない奴が戯言言うんじゃねぇよ。」
「っっ!?!?」
「今ので、本当だったらお前は死んでるぞ。哲平、もっと気を配って周りを見ろ。」
「なっ!?!?」
「いつ動いたんだ!?!?」
「見えなかったぞ!!!!」
下っ端に奴等がザワザワと騒いでいく。
「静かにしろ。」
その哲平の一言で静まりかえる。
「なんで俺以外の名前を知っているんだ。」
「さぁな。」
「誤魔化すな。教えろ。」
「教えてどうする。」
「嗄綺をもっと知る。」
「笑わせるな。」
「どうして…………名乗ってないやつの名前まで分かるんだ。俺以外の奴等は初対面のはずだぞ。」
「本当にそうか??」
「…………どういうことだ??」
「本当に初対面と言えるか??」
「竜も悠も舜も真も哲平も初対面か??」
「嗄綺……………それ以上、言えば気が付くはずだぞ。」
「さぁな。あたしの存在がどれだけだったのか知れる良い機会じゃんか。」
あたしは真純に笑いかけた。
真純はあたしの楽しんでいる気持ちに気が付いたのか溜め息を吐くとあたしの腕を引っ張った。
「馬鹿が、あとで説教だ。」
「やれるものなら。」
「ったく、行くぞ。」
「フッ、もうこれまでだけどな。」
「哲平、後でここにきてお前等の質問に答えられそうなものは答えてやる。それまでに上で怯えてる奴や下っ端達の暴動を始末しておけよ。」
「…………真純さん。嗄綺をどこに………。」
「それも後だ。じゃあな。」
真純はあたしの肩を掴んで引き寄せると下っ端の奴等と目を合わさせないようにこの少し横に腕を置いていた。
「やっぱり、真純は変わらないな。」
「嗄綺も相変わらずだな。」
「そうでもない。」
「よく言うよな。」
その時の真純の顔は…………少しだけ強張っていた。

