「待ってっ!!!!行かないでっ!!!!」


だけど、その腕がまたあたしを抱き締めることはなく………。


代わりにあたしの腕は…………紅い血で染まっていた。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


あたしはハッと目が覚めた。


額ににわかに汗が伝う。


そして…………。


気が付いたことがある。


それは、あたしの身体に巻きついている腕。


そのおかげで身動きが出来ない。


でも、この腕には何故か懐かしさがある。


あたしはそのまま少しの間、その腕に抱かれていた。


不快には思わないその温かさと心地よさに安心した。


「安心………し……た……この……あ………たしが………??」


「んっ……………。」


不意に後ろから声がした。


ドクンッ   ドクンッ   ドクンッ


心臓が騒ぐ。


息を殺せばまた寝るか??


あたしは寝たふりをした。


でも、その声にあたしは驚きを隠せなくなった。


「咲良さんっ!!!!」


小さな悲鳴にも似たような押し殺したような声にあたしは身体を揺らした。


そうだ、あたしは哲平に『咲良さん』のことを聞かれて………。


段々と身体がまた震え始める。


大丈夫っ………大丈夫っ………落ちつけっ………。


だけど………。


「嗄綺っ………。」


後ろから名前を呼ばれてあたしは、その腕を振り払って身体を引き離した。