…………っ咲良さん!!!!


何度も声が枯れるぐらいにあたしの大好きな人の名前を呼んだ。


「どこにも行かないでください!!!!咲良さんっ!!!!」


咲良さんはゆっくりと明るい光がさしている方に歩いて行く。


そこには何故かあたしは行けなくて。


どんなに力の限りに暴れて、咲良さんの所に行こうとしても行けなくて。


「咲良さんっ!!!!咲良さんっ!!!!」


そんな時、あたしの足元が黒い何かにゆっくりと包まれていく。


「嫌だっ!!!!咲良さんっ!!!!あたしは咲良さんを!?!?」


目の前に居た咲良さんは………さっきまで背中を向けていたのに。


いつの間にか、あたしをあの澄んでいる瞳で見つめていた。


何か、咲良さんの口がゆっくりと動く。


「咲良さんっ!!!!」


それを読み取りたくて、一生懸命に名前を呼んだ。


だけど、あたしの身体は黒いものに覆われてしまって…………。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


どうしようもない後悔と、恐怖に襲われた。


「嫌だっ!!!!嫌だっ!!!!ここから出してっ!!!!」


あのあたしの嫌いな部屋がうつる。


「あそこには行きたくないっ!!!!」


だけど、誰かにあたしはズルズルと引きずられていく。


そのうちに、あたしは息が出来なくなっていく。


「っ………いゃ………ぅっ………咲良……っさん………。」


だけど、突然その腕の力が変わって………。


景色がぐるりと変わって、あたしはあの場所に居た。


「っは…………っっ………。」


ゆっくりと息が吸える。


でも、隣であたしの手をそっと触っている相手の顔が逆光で見えない。


その顔に触れようとすれば、その手を取られて。


温かく、優しく、抱き締められた。


だけど…………やっぱりその顔は見えない。


「あなたは………誰なの??」


そう聞くと…………あたしを抱き締めていた手は消えて______。