俺は脇腹を押えながら、嗄綺に言った。
「なんで嗄綺が居ないと言うんだ。」
「居ないからだ。」
「じゃあ、俺が見てるお前は誰なんだ??」
「暴走族狩りの黒蝶。」
嗄綺は間髪をいれずに言い放った。
「…………なら嗄綺にはいつ………逢えるんだ。」
「嗄綺は元々、居ない。逢うも何も存在なんてしてない。」
「そうか。なら、俺は黒蝶。お前を嗄綺と呼ぶ。」
俺はしっかりと嗄綺に届くように言った。
「嗄綺と呼ぶ??笑わせるな。殺すぞ。」
その表情には微かに動揺の色が見える。
「どうしてそこまで嗄綺の存在に否定する。」
「嗄綺は……………死んだ様なものだからだ。」
「死んだようなもの??」
「感情を持ち合わせていない。」
「感情??」
「嗄綺になってやろうか。」
その表情はどこか儚く、闇に溶けてしまいそうなほどに消え入りそうだ。
「その格好でもなれるのか。」
「今ここにはお前しかいないからな。」
「…………そうか。」
「……………加宮哲平。」
「なんだ。」
「お前は愛していた人が目の前で失ったことはあるか??」
「あぁ。」
「それは…………いつだ。」
「咲良さんが亡くなった時だ。」
「咲良さんが…………まさか………。」
「咲良さんを抱いていたのは俺だ。」
「………………そうか、あれがお前だったのか。」
その表情は今のも辛そうで崩れてしまいそうな。
そんな表情だった。

