「奥に行くぞ。」
そう言って、黒蝶は俺に背を向けて歩き始めた。
「……………。」
「……………………。」
互いに何も話そうとはしなかった。
だけど、俺はその黒蝶の背中を見れたことに。
もう1度、逢えたことに何も考えられなかった。
『恋』にも似たような感覚。
『憧れ』なのかもしれない。
この気持ちは『名前』をつけるのに難しくて…………。
でも、その正体が分からなくても俺は良いと思った。
嫌な気分になることはなくて、どちらかといえば凄く心地よかったから。
「ここに…………大切な人が眠ってる。」
そこは…………まるで俺と黒蝶しかいないように感じるほど綺麗な場所。
そして黒蝶の目の前には…………。
「誰かの………………墓??」
「そう。」
その答えに俺は息を詰まらせた。
何故なら、その墓は俺にとって『1番の理解者』が眠っている所だったから。
「この人は誰にも愛された人で…………。」
何か喋っているように感じたが俺の頭の中には何も聞こえなかった。
もしかして……………いや………そんなわけ………。
「嗄綺………なのか…………。」
「誰だそれ。」
「嗄綺だろ??」
「そんな奴知らない。」
「ちゃんと答えろよ!!!!」
「嗄綺じゃない!!!!」
「ならなんで咲良さんをしてるんだ!!!!」
「えっ…………。」
「咲良さんは自分が死んだことを俺と波奈って奴と嗄綺って奴にしか教えてないと言った。」
「!!!!」
「お前はやっぱり…………嗄綺なんだろ!!!!」
俺はその一瞬でも目を離せば消え行ってしまいそうな身体を掴んだ。

