……………もう追いかけては来ないか………。



あたしはバイクを近くの公園に止めてゆっくりと波奈の表情を見た。


そこには…………。


「………ん…………。」


気持ち良さそうにあたしに抱きつきながら眠る波奈の表情があった。


「本当にこの子は…………。」


波奈はどんなに周りが煩くても騒がしくても『眠い』と感じたら寝てしまう。


だから、よくあたしがバイクに乗せていると気が付いたら寝ていることが多い。


その度にあたしは冷や冷やする。


もしそのまま波奈を振り落としてしまったらただじゃ済まないから。


でも、波奈はあたしのバイクに乗ってる時の『風』が好きらしい。


確か、前に『何で??』と聞いたら。


『風は嗄綺見たいだから。』


そう言ったのを覚えてる。


あたしは波奈の中では『風』と同じらしい。


「波奈………。起きなよ。」


「やぁだぁ~。」


「ほらっ、起きなって。」


「んにゅ~。」


「クレープがこの世界から無くなるらしいよ。」


「えっ!?!?クレープが無くなるの!?!?」


「あっ…………起きた。」


「嗄綺!?!?クレープが無くなるって本当!?!?」


「嘘だから。波奈が起きないのがいけないの。」


「はぁ~、なんだぁ~。良かったよぉ~。」


この子はクレープがないと生きていけないの………。


あたしは呆れながらもう1度、バイクに跨って発進させた。