「っっ…………。」
少しだけ男が息を潜めた。
「無駄な抵抗はするな。あたしは加減が出来ない。」
あたしはそっと片手で男の左手を掴んだ。
「!!!!」
動きを読まれたのがそんなにビックリするのか、また目を見開いている。
「お前……………如月か??」
如月とはあたしの学校の名前。
「制服がそうだろうが。」
「こんなに出来る奴は見たことがないぞ。」
そう言えば、良く見てみるとこの男もあたしと似たようなデザインの制服を着ている。
「さぁ??良い子ちゃんでやってるからね。」
「お前、同い年か。」
「あんたも1年なんだ、随分。大人っぽいのにな。」
「お前もけっこう大人っぽいけどな。」
「良く、言われるよ。」
あたしはナイフを握る手に力が入る。
あぁ、そろそろ止めないと『嗄奈』もあたしも止められそうにないかな。
「消え失せろ。」
あたしは即座にナイフを閉まって、男に背を向けて歩いた。
家に帰ろう、今日はここに来るんじゃなかった。
だけど、あたしの身体は後ろに強く引っ張られて………。
「俺の名前は加宮哲平だ。」
そうあたしの耳元で囁くと…………。
瞳を何かで覆われて………。
唇には何か温かいものが触れていた…………。
『加宮哲平』と名乗る男はあたしに………キスをしたんだ。