嗄綺side
「っは…………くっ………。」
真純の部屋を飛び出して、ただ走り続けていた。
溢れる涙を見られないようにパーカーのフードを深く被って。
「大丈夫だっ…………今はっ、押さえろっ……。」
言い聞かせるようにゆっくりと噛み締めるように。
空気を大きく吸って、止める。
ドクンッ、ドクンッと心臓の音が聞こえる。
あぁ、まだ生きてる。
まだ、やることがあるんだ。
まだ、あたしは…………俺はやらないと。
そんな小さなある事への確認をした時だった。
小さく、でも確かに携帯が震えた。
「………はい。」
『嗄綺!?いまどこに居んの!?』
キーンと甲高い耳鳴りがした。
電話の相手はかなりご立腹に波奈だ。
チラッと携帯の画面を見る。
「………わりぃ……、いま帰る。」
『………嗄綺??いま、黒蝶なの??」
あぁ、忘れてた。
まだ、あたしは『駿介』の存在のことは波奈には離してないんだ。
「いいや、違うよ。今から帰るね。大丈夫。ちゃんと帰るから。」
いつもの嗄綺に戻してから波奈と話をする。
『本当に帰ってくるよねっ??』
波奈はあたしが居なくなることが嫌いなんだ。
「大丈夫、ちゃんと帰るよ。」
なるべく、声を穏やかにして話し続ける。

