「はぁ、よいしょ。」
あたしはある場所に上った。
そこはこの街が一望できる大きな樹。
ここであたしはただ空を見るだけ。
何も考えずにただボーッと空を眺める。
そして、睡魔が来たらそのまま身を委ねる。
空にはたくさんの雲が行きかう。
「綺麗だなぁ…………。」
ポツリッと1人で呟いた。
「___さん。そっちはどうですか??」
あたしは届くことのない想いを声に出す。
あたしはこの場所が大好きだ。
誰にも邪魔されないこの『時間』が。
綺麗な芝生の上にたった1本しかない大木。
まるでこの世界には『あたし』以外、居ないように感じる。
しかし…………。
「それ以上、こっちに近づくな。」
あたしはゆっくりと後ろを振り向いた。
そこには、黒髪に金のメッシュにスラッとした身体つきの男が居た。
その顔はまるで人形のように綺麗に整っている。
「…………。」
男は何も言わずにあたしを見た。
「お前、さっきからあたしを連けてんじゃねぇよ。」
「!!!!」
その言葉に男は目を見開いていた。
そう、この男はあたしが学校を出て10分ぐらいの所から後ろに居た。
最初は、そこらのチンピラかと思ってあたしは色んな入れ組んだ道を歩いた。
途中であたしに付いてこれなくて消えてたけど。
ここまであたしに執着してくる『意味』が分からない。