「なぁ、俺はなんでお前に抱きつかれてるんだ??」
『嗄綺』と呼べない自分が情けなく思えた。
呼んでしまえばその嗄綺の独特なオーラに包まれてしまいそうで、
この俺の心の奥にある気持ちに気が付きたくなくて、認めたくなくて………。
「だって、真純って良い香りするじゃん。」
「意味が分かんねぇよ。」
俺はチラッと俺に襲いかかってきてた『紘也』という男に視線を送った。
その男は、俺を睨んでいて。
でも、その瞳は少しだけ光を見付けたことが嬉しいのか明るくも見える。
「おい、早く帰るぞ。お前も来いよ。」
俺は紘也の腕を掴んで肩に回した。
「なっ!?俺に触るんじゃねぇ!?」
紘也は俺の手を払いのける。
しかし、いきなり身体を支えるものが無くなってバランスを崩している。
「馬鹿っ!!危ねぇぞ!!」
その時、俺に抱きついていた嗄綺が紘也の身体を支えた。
しかも、嗄綺よりも幾分も大きい紘也の身体を片腕1本で。
「暴れるな、早く帰って寝たい。」
嗄綺の声は怒っているのか低く、少しだけ殺気を感じる。
「「っっ!!」」
俺と紘也の口から小さく悲鳴が漏れる。
「あっ…………ゴメン。」
嗄綺はハッと何かに気が付いたかのように目を見開いている。
「いや、俺は平気だ。」
「なんとか俺もな…………。」
しかし、手の震えは止まらない。
心では怖いと感じなくても自然と本能が嗄綺に対して『恐怖感』を抱いている。

