「甘ったれたこと言ってんじゃねぇよ。」
気が付いたら、真純とその男の前に出ていた。
「お前っ!?」
真純は驚いたのか、こちらに視線を送る。
「てめぇ誰だぁ!?」
男は狂ったかのように喚いてあたしを睨みつける。
「お前、名前は??」
「うるせぇんだよ!?」
男は近付いてきたあたしを警戒している。
「おいっ!?」
真純はそんなあたしを引きとめようとしている。
「真純、動くんじゃねぇ。コイツはあたしが片を付ける。」
あたしはその男と同じ目線になるようにしゃがんだ。
「お前、昔の真純そのものだぞ。」
「何言ってんだ!?」
「真純だってお前のように狂った時だってあるんだ。誰だって『完璧』を望んでいる。」
男はあたしの言葉を黙って聞いている。
「でも、完璧を望んだって誰も本当に完璧にはなれない。」
男はあたしから目を逸らした。
「それを分かってても人間は望むんだ。でもな??少しでも完璧に近付く方法は誰だって持ってる。」
その言葉に、男は…………。
「俺は、ただ周りに俺の存在をちゃんと分かってほしかった。」
男は悔しそうに下唇を噛んでいる。
「俺の仲間は俺を『総長』と呼ぶ。それは当たり前だ。上下関係の厳しいこの世界じゃそれが暗黙のルールだから。」
男は絞り出すような声であたしに必死に訴えている。
『俺の話を聞いてくれ』
『俺自身をしっかりと見てくれ』
あたしに分かってほしいと言っている。