真純は、相手の総長とはどうなったのだろうか……………。
そっと足音を消して歩いて行く。
「あっ……………真純だ…………。」
あたしの視線の先には真純と相手の総長が闘っている瞬間だった。
相手はすでにボロボロでいて、立つのさえままならないような状態だった。
真純は少しだけ口の端が切れていて、赤い血が垂れている。
「もう、良いだろ。」
真純の声が響く。
「うるせぇよ、俺はお前を殺す。」
「なんでそこまで俺にこだわる。」
「真純、てめぇは何が何でも殺してぇんだよ。」
「なんでだ。」
真純の絞り出すような切ない声が耳に入る。
「俺はお前を殺して他の奴等に俺の強さを認めさせるんだよ!?」
薬の効果が切れたのか、真純の敵わないと分かって精神が可笑しくなったのか。
男は狂ったように叫ぶ。
………………コイツはただ、認められたいんだ。
自分のちっぽけな存在に少しでも誰かが気が付いてほしいと。
「お前は、俺を本当に殺したら認めてもらえると信じているのか??」
「あぁ、今のこの世界の王者はお前だからな。」
「………………。」
「なんか言えやぁ!?」
男はまだボロボロになった身体で真純を殴ろうとしている。
何故、真純がそんなに切ない顔をしているのか。
少しだけ分かった気がする。
それは、前の真純がそうだったから。
だから、真純は自分と重ね合わせているんだ。
あんなに人を憎んで、蔑んで生きることしか出来なかった昔の自分と。