授業が全く頭に入らない。

担当の教師は……岡島勇気。
しかも、ちょうど社会の授業で歴史ではありがちの女のドロドロとした世界の話を先生はしている。

この際だから聞いてしまおう。

「先生。」
「どうしたの?神山さん。」
先生は少し、びっくりしていた。
「愛ってなんですか?」
「えっ?」
「偽りの愛と本当の愛では、どう違うんですか?」
「えっと……」
困っている先生に私は更に質問を重ねる。
「先生は、本気で人を好きになったことありますか?今、先生が本当に心から愛している人はいますか?」
教室中がざわめきに包まれる。
「それ、私も気になる!」
「どうなんですか?先生。」
女子生徒が騒ぎ始める。
「静かにして!神山さん。その質問には答えられません。」
「岡島先生…やっぱり私、偽りの恋をしていたみたいです。」
「明衣香、偽りって?」
「嘘の恋。」
「なるほど。」
「でも案外、偽りの恋も楽しかったです」
そう言って私は教室を出た。
「神山さん!」
先生は廊下で私を呼び止める。
先生に名前を呼ばれたとたんに、魔法にかけられたように足が止まった。
そして、私の頬をゆっくりと涙が流れていく。
「今さら…私の名前なんて呼ばないでよ!」
「えっ。」
「先生に出逢うくらいだったら、あのとき死んだ方が良かった!」