「海だぁ~!!」



海なんて、何年ぶりだろう。

小さな子供のようにはしゃぐ私をからかう先生。


浜辺に立って海を見ると、水平線に夕日が沈みかけていた。


私の隣に立つ先生の横顔は、夕日でオレンジ色に染まってた。

それがあまりにもかっこよくて、急に緊張してきてしまった私。



「なに、急に大人しくなってんだぁ?」



そう言って、私の顔を覗き込む先生。

顔が近すぎて、また緊張度が増す。



「な、何でもない!!……うわっ!冷たっ!」



先生が海水を私にかけてきた。



「夕方の海ってすいてていいな!」



なんて言って、笑ってる先生。


緊張なんて、すぐに吹っ飛んだ。



「なぁ、ギリギリまで入ろうぜ!」



先生が、突然そんなことを言い出した。



「え!?私、水着なんて持ってないよ!?」


「水着なんてなくてもいいの!ほら!」



そう言って私の手を握り、海の中へ入る先生。


先生の手はやっぱり大きくて、私の小さな手はすっぽりと包まれた。



ドキドキ……

ドキドキ……



鳴り止まない心臓。

いい加減、うるさいなぁ。



先生に気付かれないうちに、誰か止めてよ。

夢のようなこの時間を、誰か止めてよ……。