その男の人が振り返った。


びっくりした。


だって、篤真だったから。


「やばっ」


「…」


慌てて視線をはずす。


男の人は不思議そうに見ていたがすぐに前を向いた。


びっくりしちゃった。


だって、篤真なんだもん。


授業中、一度も彼はノートを取らなかった。


凛子と私は不思議そうに見た。


「取ってなかったよね」


「頭の中で整理してたんじゃない?」


「そんなに頭いいわけ?」


「すごいね…」


そっと立ち上がると、
このあともそのまま講義があるのか荷物をおいて教室を出ていった。


ドキドキが止まらない。


「じゃ、凛子またね」


「うん」


追いかけるように教室を出た。


すると、たまたま彼は戻ってくる時だった。


「ね、ねぇ」


「なに」


「篤真…?」


「……」


無言の彼。


え、何か変なこと言ったかな?


「そうだよ。…ちょっと来て」


篤真はそのまま人通りの少ない方へ歩いていく。


私はそれについて行った。